教授挨拶

慶應義塾大学医学部麻酔学教室教授 森﨑 浩

森﨑 浩
慶應義塾大学医学部麻酔学教室教授

Hiroshi Morisaki, M.D.
Professor and Chair
Department of Anesthesiology, Keio University School of Medicine.

慶應義塾大学医学部麻酔学教室は、1955年4月全国3番目の医学部麻酔学講座として開講し、本邦麻酔学の草分けである天野道之助 初代教授が主宰されたことに始まります。私は2012年10月、武田純三教授の後任5代目教授として就任いたしました。

麻酔学は、手術という外科的侵襲から生体を防御する学問である一方、その急速な発展と共に重症患者管理を担う集中治療医学や急性痛のみならず慢性痛への対応を含む疼痛学、あるいは悪性腫瘍を含む難治性疾患に対応する緩和医療学など、現在では麻酔科医が活躍する場が飛躍的に広がってきています。当教室では、主に関東近県にそれぞれ特色ある教育拠点病院との連携の下、麻酔科医として多様な診療領域で研鑽し、活躍する場を整えてきております。麻酔科医に求められているのは、周術期医療を中心とした専門的知識と技術、的確な判断力あるいは倫理観のみならず、急性期医療の要となる手術室や集中治療室等の中央診療部門の円滑な運営を担える協調性と公平性、さらに自らの判断や考え方を伝達・実践できるコミュニケーション能力を持って、患者の健康回復に貢献できることであると私は考えております。当教室では、手術麻酔のみならず、手術室外におけるさまざまな診療領域での研鑽を通じ、これらの素養を兼ね備えた“質の高い麻酔科医を数多く輩出する“ことを目標としております。また大学病院は診療と卒前・卒後教育のみならず、麻酔学領域の先進的な研究を通じ、医学の発展に貢献できる人材を輩出することも重要な社会的な責務です。初代医学部長北里柴三郎博士が、当医学部開設にあたり「基礎医学と臨床医学が一家族のごとく融合し研鑽し合うことを特色としたい」とされたように、私を含む多くの教室員や大学院生がこれまで基礎あるいは臨床系研究室との連携の下に研鑽を積んできております。今後も、この連繋を一段と深めながら、麻酔学領域の基礎ならびに臨床研究を推進すると共に、若手医師が日常診療の中で常に疑問を持ち、回答を導く姿勢を育んでまいります。

医学の進歩と共に、社会は“より先進的”で、“より安全”で、かつ“より質の高い”医療を期待し、医療界はそれに応えていく責務を担う時代となりました。麻酔科医は、その横断的な対応力を生かしながら医療安全等の面においても、その活躍の場が期待されています。社会の期待に応えながら、麻酔科関連領域の診療と研究を先導する麻酔科医を育てることが私の使命であると肝に銘じているところです。

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