日本小児麻酔学会第28回大会参加報告

日本小児麻酔学会 第28回大会
開催日:2023年10月7日〜8日
開催地:ザ・グランユアーズフクイ(福井)

麻酔科5年目になりました松沢真奈です(産育休のため実質4年目)。私は今回初めて、日本小児麻酔学会に参加させていただき、4年ぶりのポスター発表を行いました。
小児麻酔の特徴として、肺の予備能がなく酸素消費量が多いため、低酸素に陥りやすいこと、心筋が未熟のため心拍出量が心拍数に依存していること、体重あたりの体表面積が大きく低体温になりやすいこと、肝腎機能が未熟であることなどが挙げられると思います。さらに、人見知りが始まる乳児後期からは心理的ケアも必要になります。また、年齢により薬物動態が異なるという特殊性もあり、専門性の高い分野だと感じています。そのため、少しでもその特殊性を学びたいという思いから、今回発表させていただくことを決めました。

4年前とは違い、私にとっては1歳児を育てながらの挑戦でした。ペインクリニックをローテート中で、1歳児を寝かしつけてから発表準備の作業をすることがほとんどでした。予演会の直前に、娘の認可保育園への転園が決まるなどもあり、指導医の寅丸先生のみならず医局の皆様にも多大なるご迷惑をおかけしてしまいましたが、皆様のお力添えのもと、なんとかポスターを作成することが出来ました。

学会会場に到着し、まず初めに感じたことは、行き交う先生方の温かい雰囲気でした。小児麻酔は繊細で難しいイメージがあり、良くも悪くも緊張してしまう場面が多くありますが、会場にいらっしゃった先生方は、みな余裕のある印象で、豊富な経験を持たれていることが感じられました。

会場にはお子様の姿も多くあり、私も寅丸先生も子連れで参加しておりました。先輩に聞いた話によると、神経ブロックのハンズオンコーナーでは、主催者の先生方のお子さんが超音波装置を当てる被験者になってくださるとのことでした。会場内どこを見ても先生方が皆笑顔でお話しされていて、和気藹々とした雰囲気が印象的でした。

今回、私は日齢5でアナフィラキシーショックを呈した一例について発表いたしました。指導医の寅丸先生から懇切丁寧にご指導いただき、不安を抱くことなく発表に臨むことが出来ました。1人10分、6名で1時間のセッションでしたが、興味深い症例ばかりで、優しく有意義なディスカッションもあり、あっという間の1時間でした。

特に勉強になったのが、食道閉鎖症の麻酔管理についてです。教科書では低圧換気で気管挿管後、①気管チューブ先端を瘻孔よりも末梢に置く②気管支挿管とする③Fogarty®カテーテル(FC)で気管食道瘻(tracheoesophageal fistula: TEF)を閉鎖するとありますが、TEFの同定方法までは書かれていないと思います。これは症例により多くのバリエーションがあるためです。発表では、FCが入る余地のない低出生体重児においてTEFの同定に難渋し、気管支鏡の光源を用いた症例や、二期的手術の初回手術時に、留置した胃瘻チューブを用いてTEFの位置を同定したという発表がありました。

このように、自分が経験していない症例についても、自分が似たような症例を担当することになったらどうしようか、などと考えながら発表とディスカッションを聴くことで、難症例の対応を追体験することができました。大変勉強になり、発表体験以上の収穫となりました。規模が大き過ぎないため、心が折れることなく会場を見て回ることが出来た点も良かったと思います。

学会の後は、福井県立恐竜博物館や永平寺を訪ねました。小児麻酔認定医申請資格の一つに、日本小児麻酔学会での発表という項目がありますので、小児麻酔に興味がある方は、是非一度、参加していただきたいと思います。

〜番外編〜 「1歳児と行く東京〜名古屋〜福井、4〜6時間の旅」

家族3人で福井へ向かう予定でしたが、夫は仕事が入ってしまい、急遽1歳7ヶ月の娘との2人旅になりました。歩くのが大好きであまりじっとしていられない娘です。最寄りから福井駅までの約4時間をどう過ごすかもある意味、挑戦でした。以前膝の上で過ごすのに限界を感じたので、今回は娘用の席を購入しました。未就学児は小児用パスモが使えないため、チケットを発券する必要があり、そのチケットは有人改札しか通れないというのを初めて知りました。

12時までにポスターを貼らなければいけないため、5時に起床。まだ寝ている娘をベビーカーに乗せ、出発。新幹線に乗って、まずは朝ごはんで時間稼ぎ。その後持ってきたアナログおもちゃで時間稼ぎ。その後どうしようもなくなったらお菓子。それでもどうしようもなくなったら、最終兵器iPadを登場させ、なんとか着きました。

帰りはお昼寝の時間に合わせ、快適な新幹線の旅でした(「大型荷物有」で予約すると、最後尾の椅子の後のスペースが使えるので、ベビーカーで寝ている娘ごと収納させていただきました)。リュック+ベビーカーか、キャリーケース+抱っこ紐か、悩みましたが、帰りのことを考え、前者にして正解でした。

松沢 真奈

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